為替市場の暴騰・暴落をベキ分布から予想する

為替市場の暴騰・暴落をベキ分布から予想する

為替相場の変動は、ベキ分布に従うことも知られている。

 

ベキ分布とは、右下の概念図のように、大きな値のほうに向かって曲線が緩やかに裾野を延ばしていく形状を持ち、恐竜の尾っぽ(テール)に似ていることからロングテールと呼ばれることもある。標準偏差は無限、平均値も意味を持たないが、音楽CDの売り上げやホームページのヒット数、企業収益など、おおかたはそれほどに大きくないのに一部に異常に高い値を示すものはベキ分布となっている。

 

他方、左下の釣鐘型の概念図他が正規分布。平均と標準偏差で表すことができるため、市場調査の分析やテストの成績などに使われている。数式にしやすいことから金融工学でも使われている。ところが、上のグラフの元データの変動の大きい上位5%を取ったベキ分布と、変動の大きい上位5%を除いた正規分布とを比較していただきたい。大きな変動を取つたベキ分布のほうが正規分布より実際の変動に近いのである。

 

ベキ分布は標準偏差が無限になるうえ、平均値も意味を持たないが、大きな変動を見るため、為替変動の分析には向いている。データ解析とシミュレーションによって、これまでの経済学では解明できなかったさまざまな事象が見えるようになった。データの解析によって、円、ドル、ユーロと三つの通貨を循環的に取引するだけで、売値と買値の差を利用した「裁定機会」で利益が上げられることも確認されている。裁定機会の持続時間分布がベキ分布になることや発生頻度は五%程度あることなどがわかってきた。

 

また取引時間の間隔も一定ではなく、ディーラーは過去3分程度の取引の様子を見ながら、取引頻度が高くなると後れを取らないように自分の時間を速め、取引数が減少すると時間の進行を緩める」傾向があることも、莫大なデータの解析から読み取れるようになった。これまで漠然としか知られてこなかったことが経済物理学のアプローチから可視化できるようになった。次ページからは経済物理学的アプローチによる実際の予測モデルについて考察する。

 

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